ベースフード“ブランド”の描き方|ブランドマネジャー溝口究
こんにちは。BASE FOOD note 編集部です。
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」をミッションに掲げるベースフード。2016年の創業から8年が経過したベースフードブランドはどこへ向かうのか、ブランドに込められた想いとは……。本記事ではベースフードのBranding/Creative チームリーダーである溝口究に、2024年の振り返りと共に、これからの“ブランド”について聞きました。
ブランドがちゃんと生きている。
編集部:
ベースフードブランドにとって、まずは2024年の振り返ってみてどのような1年でしたか?
溝口:
ブランディングの視点では「動いたな、生きてたな」というのが率直な感想です。まず、公式から発信したプレスリリースの数では、上場した2022年は13本、2023年は16本に対して、昨年2024年は67本。またプレスリリース以外にも各種お知らせやSNS等での発信、売り場やイベント等のリアルなコンタクトポイントも含めると、多種多様な情報を皆さんにお届けすることができたと思います。勿論、情報の発信数やコンタクト数だけでブランドの良し悪しを決められるものではありませんが、これだけの情報を発信できたということは「ブランドがちゃんと生きている」という証ではあります。
ブランディングは一方的なものではなく社会とのコミュニケーションであり「対話」ですので、こうして各所で情報発信を通じた“投げかけ”をし続けられたことは、新たな気づきや学びにもなりますし、これから先ベースフードがブランドとして更に成長していく上で、一つ一つを積み重ねていく機会としてとても貴重な体験だったと考えています。
編集部:
常にコミュニケーションをし続けることで、ブランドが育っていくということですね。具体的にはどのようなトピックスがありましたか?
溝口:
そうですね。私たちベースフードには昔から『カイゼン』というブランドアイデンティティがあり、常によりよいもの、常により価値のあるものを提供していくためにアップデートし続けていくことを大切にしています。その上で「対話」のきっかけを作ること、そして「対話」をし続けることがとても重要であり、これからももっとしていかなければいけないことだと感じています。
具体的な中身の部分、まず「守り」の部分で言えば、2023年の自主回収事案から進展した一年だったとも思います。COO 川南のインタビューにもあったように、社内の評価制度やその他の社内制度等々の「社内の守備面の強化」も進めていますし、対外的には「ちゃんと伝える・ちゃんと応える」ことの重要性を改めて認識した一年でもありました。「食の安全安心への取り組み」ページの公開や、発送形態の変更に関するお知らせもその一例ですし、CS組織の強化もその一環ですね。
食品ブランドにとっての大前提であり、全ての土台となるのは「安全安心」です。そしてユーザーの皆さんをはじめ、全てのステークホルダーの皆さんから「信頼」していただけるブランドを作ることが至上命題の中で、商品・サービス自体の品質面の向上は勿論ですが、ベースフードとしての根底の思想やそれに至った考え方、さらに言えば反省や葛藤や挫折も含めたHard Things(困難な壁)のプロセスまで、それらをオープンに対話することが必要だと私は思いますし、そうすることでベースフードらしい強さを構築・拡張していけるのではないかなと考えています。まだまだ途上であり課題の多い部分ではありますが、ベースフードという“ブランド”を一人の人として信頼してもらえるように、前進していければと考えています。
課題は「アイデンティティの確立」「パートナーの拡張」「共創の見える化」。
編集部:
「攻め」の部分ではいかがですか?
溝口:
年間13種類の新商品・リニューアル商品の発売、新サービスや機能アップデート、各所への参画や協業、ブランドプロモーション展開など、「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」の実現に向け、様々な領域において一歩一歩前進した一年だったとも思います。
編集部:
ブランドコミュニケーションにおいて、特に印象に残っているアクションはありますか?
溝口:
「アイデンティティの確立」「パートナーの拡張」「共創の見える化」この3つのテーマがベースフードブランドの課題だと思っているんですよね。自分たちらしさを固持しながら、それに共感・共鳴していただける仲間と共に具体的なカタチにしていく、ということです。
まず「アイデンティティの確立」という部分では、Brand Bookとしてベースフードの思想やスタンスを明示できたこと、そして新パッケージデザインを通じても表現していくことができたのではないかなと思います。また、Branded Movie『父を、乗せて。』では、“大切な人に健康を贈る”という私たちならではのブランド体験(モノの価値ではなくコトの価値)を提唱することができましたし、ギフトサービス『AnyGift(エニーギフト)』の展開にも繋がりましたね。
クリエイティブの領域でも、新パッケージデザインをはじめ、プロダクトのビジュアルや店頭の什器、CMなどの広告、PR、各種プロモーションツールなど、各所でBASE FOODブランドとしての世界観を表現していくことができたのではないかなと思います。
編集部:
昨年は心身の健康の“ベースアップ”をサポートする「BASE UP PROJECT」も始まりましたが、感触はいかがですか?
溝口:
2点目のテーマ「パートナーの拡張」という部分で、「BASE UP PROJECT」はとても有意義なアクションを始動できたと思っています。各種イベントの主催・協賛・後援、SNSやメディア等を通じたPR活動、プロアマ問わずサプライヤーとしての提携・サポート、各種企業や団体等との提携・コラボレーションなど、様々な取り組みを幅広く展開するプロジェクトですが、中でも特に皆さんの印象に残っているは、トップアスリートやアーティストとのサプライヤー契約/サプライヤープログラムかなと思います。
サプライヤー契約・サポート活動の目的は、いわゆる広告・スポンサー的な宣伝目的のものではなく、またキャンペーンのような短期的な売上を主目的としたものではありません。ブランドイメージの醸成により好意度・ロイヤリティに寄与すること、そしてもう一つはミッションの実現へ向けた仲間でありファンの輪を広げることを目的としたものです。これは中長期的な視点でブランドにとって不可欠であり、ブランドの発展を後押ししてくれる存在になっていただけると考えています。
選手やアーティストの皆さんからもポジティブなコメントを沢山いただいており、選手やアーティスト間でも口コミやSNS等でも広めていただいたりと、地道ではありますが業界やファンの皆さんの間で着実に広がりを見せているなと実感しています。
また、「BASE UP SPORTS PROJECT」が「Japan Sports Activation Awards2024」にて企業賞も受賞させていただき、これも全て選手やチーム関係者の皆さん、そしてファンの皆さんのおかげですし、本当に感謝しています。
編集部:
「BASE UP PROJECT」では今後どのような展開を考えていますか?
溝口:
引き続き、プロアマまた競技・カテゴリーなどジャンルを問わずサポートを実施・拡張していきたいと思いますが、これからはもっと選手やアーティストにとって、そしてBASE FOODユーザーの皆さんにとって有意義な活動となるよう、立体的なアクションも実施していきたいと考えています。
例えば、契約選手にご協力をいただき、お子さん向けの「スポーツ×栄養」イベントを実施したり、アーティストの皆さんとの絵画教室、コラボや監修商品の展開など、ブランドとして単に「食」のプロダクトの価値提供だけではなく、ブランドの体験価値を醸成できるような取り組みも実施していきたいですね。
「BASE UP PROJECT」はスポーツ・アート・音楽といったカテゴリーだけではなく、KIDS/TEENSへのアクション、またソーシャルグッドな取り組みをするPROJECTでもありますので、多角的に活動を展開していければと考えています。
ブランドは企業の所有物ではない。
編集部:
3つ目のテーマ「共創の見える化」において、なにか主なトピックスはありましたか?
溝口:
クリエイティブの領域では、パッケージリニューアルがありましたね。以前から「中身が分からないので手に取りにくい」「親しみを感じにくい」といった感想を抱く方々も多く、ブランドとユーザーの皆さんとの距離感に課題がありました。パッケージはブランドの“顔”となる部分なので、勿論ブランドとしてのスタンスであり、一つの意思表明としてブランド側から“提案”していく領域でもあるのですが、今回のパッケージデザインでは実際にユーザーの皆さんへのアンケート等も実施し、皆さんの反応や感想を踏まえた上でデザインを決定しました。
溝口:
袋のカイゼンもそうですね。商品の品質向上を目的としてパッケージ不良削減のために包装材フィルムを変更したのですが、一方でその変更によりパッケージが開けづらくなってしまうという問題が起こりました。実際にユーザーの皆さんからもLaboやSNSでもご指摘をいただきました。対策としては、切れやすい方向を分かりやすくするためにシール貼付をしたり、カット刃の改良・変更を行うなどのカイゼンを行った訳ですが、これも皆さんからの声があったからこそより良いプロダクトに改良できた事例だと思います。
溝口:
ブランドは企業の所有物ではなく、ユーザーの皆さんやパートナー企業の皆さんと共に作り、さらに共に育て上げていくものだと考えています。生き物のようなものですよね。今回のパッケージリニュアールや袋のカイゼンもあくまでその一環に過ぎませんが、今後もユーザーの皆さんそして社会との「共創」であり「ナラティブ(終わりのない物語)」を通じて私たちだけでは成し得ないことをカタチにしていきたいと思っています。
編集部:
2024年に発売した即席麺(カップ麺)に対しても、様々なご意見がありましたね。
溝口:
そうですね、先行品である「BASE PASTA ソース焼きそば/旨辛まぜそば」の終売も含めて1月16日に新発売した「BASE YAKISOBA」も一つの社会との対話であり、物語を紡いでいくコミュニケーションのプロセスかなとも思いますね。
2024年に発売したカップ麺は文字通り賛否両論があり、SNSでも話題になった商品でした。結果的に終売という決断をしたわけですが、私たちにとってはまさにHard Things(困難な壁であり乗り越えなければいけない壁)だったと思います。今回新発売した「BASE YAKISOBA」は、無論それらの声だけを受けてカイゼンした商品ではないのですが、声を真摯に受け止めて、柔軟且つ迅速に対応していくというベースフードのアイデンティティでありパーソナリティが生んだアクションだったのではないかなと思いますね。
編集部:
「BASE YAKISOBA」はティザークリエイティブも展開しましたよね?これまでのベースフードではあまり実施していなかったかなと思いますが、どのような意図があったのですか?
溝口:
新商品に対するプレゼンスを高めて初速の売上を上げるためのアクションではありますが、もう「よし、やってやるぞ」っていう気持ちですかね。まだまだカイゼンの余白があるものの、「BASE YAKISOBA」はティザー展開するだけの商品に対する自信と覚悟があった、というのもあります。なので、リニューアルではなく、あえて「BASE YAKISOBA」として新たなシリーズを立ち上げて“REBORN”として発売しました。これもブランドとしての覚悟ですし、BASE FOODの即席麺をBREADに次ぐ第二の柱にするぞ、という意思表明でもあります。
正直、落ち込みもしましたし、悔しかったですよ。あれだけの声をいただいた中で、勿論それらを真摯に受け止めつつも、次こそは一人でも多くの皆さんに満足していただきたい!私たちの覚悟であり思いを届けたい!ぜひ期待してほしい!そんな気持ちでしたね。
編集部:
「しめ縄に願いを込めて。」のクリエイティブも結構攻めましたよね。
溝口:
攻めたというニュアンスよりも、ブランドからの少しお茶目なアンサーの形ですかね。確かに今までのパーソナリティとは違う一面を見せた感はあります。ベースフードは上場企業であり、また「食」のテックカンパニーとして、「安心感のある」「信頼感がある」「真摯的で誠意がある」「先進的である」といったパーソナリティは揺るぎのないものですが、いわゆる真面目な一面だけではなく、食を楽しむという部分でも人生を楽しむという部分でも、ブランドにはユーモアな対話も時に必要かなと思うんですよね。今回のクリエイティブも攻撃的ということでは一切なく、「ありがとうございます&これからもよろしくお願いします!」というポジティブな気持ちも込めて、少しユーモアを交えてコミュニケーション(対話)しました。
不易流行であること。
編集部:
ベースフードブランドにとっては「対話」がキーワードですかね?
溝口:
そうですね。「ベースフードはこうだ」「BASE FOODらしさとはこうだ」と自分たちで規定すること、そしてそれを発信し守り続けることも大事です。そのような「軸」が無ければ強固なブランドにはなり得ないので、今後も自分たちが描く「らしさ」を追求し続けていきたいと考えています。
一方で、ベースフードは創業時からユーザーの皆さんやパートナーの皆さん、そして社会との共創を通じて新たなバリューを生み出し拡大・拡張し続けているブランドでもあります。
「不易流行」という言葉がありますが、いつまでも変化しない本質的なものを守りつつ、新しい変化を積み重ねていく。そして、その変化を積み重ねていく流行性こそが不易の本質であること。私たちベースフードは強い意志でありスタンスを保ちながらも、公聴性であり柔軟性があることが最大で最強の武器でもあると思います。ステークホルダーの皆さんや社会との「対話」を源泉として、それらを一つ一つ丁寧に積み重ねていくことがベースフードというブランドの資産になると思っています。
編集部:
まだまだブランドとしては成長の余地がありますね。
溝口:
2016年の創業からこれまで皆さんのおかげで企業としてもブランドとしても成長して来られた中で、一方的に攻めるだけではなく、守り続けなければいけないものが露わになってきているのも事実です。ですが、まだまだ守れていないものもありますし、加えて私たちベースフードがブランドとしてどう社会と対峙していくのか、その核心部分の確立であり、それをきちんとスタンスとして明示していくことにはまだまだ多くの課題があると感じています。
先ほどお話しした新商品「BASE YAKISOBA」をはじめ、プロダクトに含まれる栄養素に関する疑問やご指摘であったり、ベースフードが考える健康とは何か?BASE FOODのプロダクトポリシーは何か?「健康をあたりまえに。」というミッション実現に向けた思想や背景に隠れている想いなど、ブランドと皆さんとの「対話」が不足している部分もまだまだあるかなと感じています。
私たちらしい“軸”を持って対話する。
編集部:
ブランドとしては今後どのような「対話」を展開していきたいと思っていますか?
溝口:
「かんたん・おいしい・からだにい」このトレードオフをなくすこと。勿論この3つをフルマークにするために私たちは日々検討とカイゼンを繰り返しているわけですが、そこに至るまでのプロセスであり、その過程で生まれる葛藤や苦悩なども含めて、もっと“リアル”で“ディープ”な私たちベースフードを知っていただくことが必要だと思っています。
どんなに栄養価が良くてもおいしくなければ継続して食べることは難しい……どんなにおいしくても本当に体に良くなければ意味がない……どんなに品質に優れていても不便であれば満足できない……どんなにキャッチであってもブランド毀損してはいけない……。ミッションの実現に向け、難易度の高いタフな道のりを歩んでいる私たちは、これらの苦悩や葛藤の繰り返しの中で日々柔軟且つ強い意志を持って意思決定をしています。
もしかしたら、そんな私たちに対して「期待と違った」「私とは価値観が違う」「理解できない」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、私たちは私たちらしく嘘偽りのない正直な姿でコミュニケーションをしていかなければ、ベースフードというブランドは成長は疎か、そのような芯も軸もないブランドであれば、私たちが目指す社会の実現など到底不可能だろうとも思います。
一方で、あくまでも重要なのは「対話」です。皆さんがベースフードという企業に対して、またBASE FOODというプロダクトでありブランドに対して、どのように考え、何を望み、何に期待し、どう接し、どこに向かい、どう歩んで欲しいのか?それらをもっと“リアル”で“ディープ”に知ることも重要だと思っていますので、そのような発信と受信の機会をこれまで以上に積極的に設けていきたいですね。
代表橋本の“2025宣言”にもありましたが、私たちは「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」というミッションに真っ直ぐに突き進むだけです。ミッションの実現、そして一人でも多くの人に、一つでも多くの感動と笑顔が生まれる瞬間を提供できるように、私たちは私たちらしく、時には泥臭く、皆さんと共にベースフードというブランドを共に創り共に育んでいきたいです。
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