【後編】 BASE YAKISOBA誕生の軌跡 〜“REBORN”に隠された私たちのHard Things〜|BASE FOOD x 寿がきや食品対談インタビュー
こんにちは。BASE FOOD note 編集部です。
2025年1月16日に“REBORN”として発売を開始したカップ麺「BASE YAKISOBA」シリーズ。BASE YAKISOBA誕生の軌跡【前編】では、2024年に発売した初期作となる「BASE PASTA ソース焼きそば」発売までの苦悩と葛藤をお届けしました。今回の【後編】では、僅か8ヶ月で終売となった初期作のカップ麺の背景、そして新商品「BASE YAKISOBA」の誕生まで、その軌跡を振り返ります。
当社開発担当であるR&D部 商品開発の伊藤と、初期作からパートナーとして支えていただき、「BASE YAKISOBA」の実現を叶えてくださった寿がきや食品株式会社 商品開発部 開発2課マネジャーの稲垣様にインタビューしました。
▼【前編】はこちら
支えになった“同じ”想い。
編集部:
紆余曲折を経て、BASE FOODでは初めてのカップ麺となる「BASE PASTA ソース焼きそば/旨辛まぜそば」を2024年に発売したわけですが、この商品に関しては文字通り“賛否両論”ありましたね。ポジティブなお声も多数いただいた反面、SNS等でもネガティブなご意見を多数いただきました。もちろん、様々なご意見をいただくということは私たちにとっての資産でもあり、次に繋がる貴重な声なのですが、当時を思い出していただいて、率直にどう感じられましたか?
稲垣様:
そうですね、当社の方では、その賛否の否の方に関しては、やはり正直ショックではある一方で、そのように正直に言っていただけるのはとても有り難かったと思っています。実際に購入いただいた方からのご意見も勿論ですが、社内の声もです。例えば、匂いに関しては社内からも様々な意見がありました。お湯を注いで湯切りをする時に、私はもうある意味その匂いにも慣れてしまっているので特に気にすることもなかったのですが、他のメンバーに作ってもらった時に「すごい独特な匂いするけど、これで合っている?」というように率直な意見をくれたりします。匂いに限らず、知ってる人にとってみれば当たり前のことでも、そうでない人にとってみれば違和感があったり、そこが気になるんだとか、改めて教えてもらった部分も多かったですね。
編集部:
匂いもそうですし、味の部分や麺の食感など、色々な部分でご意見をいただいた中で、実際に販売をしたことでより課題感が明確に見えてきたと思います。次に作るのであればここを改善しなければいけないというポイントは、やはり味の部分でしたか?
稲垣様:
皆さんのコメントや感想を見た時に、麺がゴワゴワした感じがするという部分がとても気になりました。当時の初期作は生地がどうしても硬いという特徴があったのですが、ラーメンとかもそうなんですが「麺をすする」というのがおいしさを感じるポイントであり、その麺の滑らかさをいかに出すかというのが必要だと感じていました。どうしても、生地が硬いとゴワゴワした食感になり、上手くすすれないことが違和感であり、不味いという評価に繋がってしまいます。社内でも、これがもう少し滑らかになったら、もっと食べやすいよね、という意見はありました。私たちとしても、じゃどのようにすれば柔らかい生地であり、滑らかな麺にできるだろうと考え始めましたね。
伊藤:
私としても、毎日のようにUPされるネガティブな声というのは、正直気持ち的にはキツい部分もありました。しかし、意見は意見として本当に有難いことですし、やるべきことが明確になったというか、よし次はやってやるぞという気持ちになりましたね。
編集部:
そうですね、社内も前を向いていましたね。一方で、最初の商品を発売してから僅か8ヶ月で終売、という意思決定をすることになったわけですよね。再度もう一回作りたい!ということでまた寿がきやさんにお願いをする形になったのですが、少し歪んだ質問かもしれませんが、寿がきやさんに断られるんじゃないかとか怖さや不安はなかったですか?
伊藤:
それは信頼感というか、初期の初期から一から一緒に商品を作っていただいたという中で、商品に対して両社が同じ想いを持っているのが私たちの支えにもなっていました。なので、寿がきやさんとしてもここで終わりにはしたくはないだろうという願いであり、確信みたいなものを勝手に思っていた部分もあります。二人三脚でパートナーという存在でやってきていただいたという安心感を持っていたので、不安感というよりも期待感の方が強く持っていたと思います。
稲垣様:
私たちとしても、同じ気持ちでしたよ。もうやるぞという感じで同じ方向を見ていましたね。
辿り着いた「劇的な進化」。
編集部:
失礼しました、愚問でしたね。まさにパートナーとしての存在感であり安心感を持たせていただいているというのは、とても嬉しく、そして心強いですね。
さて、いよいよ新商品として“生まれ変わる”わけですが、意図的に終売させ新シリーズとして発売するという形を取ったのは、一種の企業でありブランドとしての覚悟と意思表明でもありましたね。通常BREAD等ではリニューアルという形で改善をしますが、今回のBASE YAKISOBAは会社全体としてのモチベーションも高かったと思います。 実際に開発者という観点で言うと、BASE YAKISOBAではどの辺りが改善ポイントで、具体的にどこをどのように生まれ変えたのですか?
伊藤:
商品としての改善ポイントは、「麺」です。麺を全面的に改善しました。「麺の食感」「麺の風味」「麺と味のバランス」この3点がご意見としても多かったですし、優先課題として取り組みました。
編集部:
一方で、それを実際に作る、製造・生産する寿がきやさんの観点では、優先的に改善すべきポイントはいかがでしたか?「麺」を徹底的に変えるというところは同じ課題感をお持ちでしたか?
稲垣様:
はい、そうですね、方向性は同じでした。 製造の観点で言えば、生地の硬さによる食感面の改善に加えて、生地が硬いことでポキポキと麺が折れやすいという課題も改善すべきポイントだと考えていました。生地が硬いとそれだけ折れやすくなってしまい、麺としてのおいしさが軽減してしまいます。なので、もう少し麺にしなやかさを与えてあげると、加工もしやすくなりますし、おいしさの向上にも繋がるのではないかと思いました。結果的に、今回の生地は私たちにとってとても作りやすい生地になったんですよね。しなやかさが増したことで、麺が折れにくく、食感も改善されるというアップデートという形になったと思います。
伊藤:
以前の設計では困難な部分だったんですが、設計を少し見直したことで、配合にも自由度が生まれ、結果的においしさにとって最も重要な麺のクオリティを劇的に変えることができましたね。
稲垣様:
配合を変えていただいたことで、生地を薄くすることもできるようになりました。初期作のものは生地が硬かったので、ローラーで生地を薄く延ばすときにどうしても厚みが出てしまい、どんなに繰り返しても薄くすることができなかったんです。それが今回しなやかな生地に改善されたことで、麺線にする際にもポジティブに寄与したと思いますね。すごい進化だと思います。
編集部:
なるほど。配合を変えるという部分での開発難易度はあるにしても、実際に工場側で作るとなった時の難易度は少し簡単になったと言いますか、課題が少なくなったということですよね。
稲垣様:
そうなんですよ。以前の生地ももちろん帯にはできていたんですが、しなやかさが無いので表面に凹凸感が出てしまい、手で触るとザラザラしたような部分が出てきてしまうということも多かったんです。それによって廃棄しないといけない生地もあったんですが、今回の生地ではそういう問題が劇的に解消されたので、私たちとしても機械調整がしやすくなり、ロスの軽減といったところにも繋がっています。
伊藤:
品質の向上を目的に改善を進めていた中で、そういった部分も改善されたというのはとても嬉しいことですね。生地を薄くしたいとは思っていてもできないという葛藤をずっと持っていたので、今回の改善で様々な課題がクリアになったことは本当に大きいインパクトになったのではないかと思います。
編集部:
初期作の当時から「なんとか薄くしてほしい!」って伊藤から寿がきやさんにずっとお願いをしていたのですか?
稲垣様:
はい、ありました、ずっとありました(笑)。私としても期待にお応えしようと、なんとかできないかなと試行錯誤して頑張ってはみるんですが、どうしても硬いので機械が悲鳴をあげてしまうんですよね。なので、ちょっとこれ以上はできないです……という形で私たちとしても歯痒い思いでしたね。薄くすることで、麺にウェーブが出しやすいっていうメリットもあるので、それが今回できるようになったので、その点も良かったなと思いますね。
これはイケる。
編集部:
やれることで多くのメリットがあるのが分かっている中で、なんとかしたいけどどうしてもできない……という本当にまさに葛藤があったんですね。 2024年の初期作では異例のラインテストを約20回ぐらい、80パターンの試作品を経たわけですが、今回は麺も味も異なる2つの商品を同時に発売する中で、大体どれくらいの試作数だったのでしょうか?前回以上ですか?
稲垣様:
工場で実際にラインテストしたのは3回ぐらいですね。
編集部:
初期作が約20回だったのに対して、今回は僅か3回なんですね。もちろんラボでのテストとかもあるとは思いますが、劇的に試作数が減ったというのは、配合の変化によって生地のしなやかさが向上したであるとか、薄くできるであるとか、そういった麺の生地が変わったことでラインテスト自体が効率的にやりやすくなったということなんですかね?
稲垣様:
そうです、それはもう間違いないです。何かトラブルがあると当社としてももうこれ以上できませんとテストを中止せざるを得ません。そうなるとまた細かなテストを繰り返ししなければならず、テスト回数自体が増えていきますが、今回はスムーズに行ったからこそテスト自体の精度も上がりましたし、回数自体が単数回で済んだということに繋がったのだと思います。
編集部:
私も実際に発売前に試食会とかで何回か食べさせていただいて、食感も風味も全体のバランスももう本当に変わったなと素人ながらその劇的な変化を感じていたんですが、作る工程においてもそれだけの劇的な変化があったからこそなんですね。もちろん、稲垣さんも伊藤さんも初期作の商品と比べて全く異なる商品に生まれ変わったぞ!という達成感もあったと思うのですが、BASE YAKISOBAとして完成品ができた時はどのような感想でしたか?初期作に対してネガティブな意見も多々あった中で、紆余曲折あってのこの商品誕生だと思うのですが、いかがでしたか?
伊藤:
「こうなったんだ!」という驚きに近い感じです。初期作の商品の味が染みついてはいたので、今回で言うと粉末ソースとかはほとんど変えていない中で、食べた時に「これを変えただけでここまで変わるんだ!」と正直びっくりしましたね。ここまで変化するんだという驚きでした。
ただ一方で、設計の部分での葛藤というか、今回はあくまで「健康は継続」ということでおいしさをアップデートさせることにプライオリティを置いて自信を持って、そして強い意志を持って発売したわけですが、味の部分は勿論のこと、栄養の設計の部分でも実際に食べる人がどう思うのかなという点は気になってはいました。最初完成した時はとても嬉しかった反面、ずっとソワソワと落ち着かない状態でしたね。ただ、発売前に試食していただいたアンケートの回答とかも見て、本当にポジティブな声も多かったですし、「毎日でも食べられるカップ麺」というコンセプトを実感していただいている反応も多く安心しました。
稲垣様:
初期作を作った時は、ネガティブな反応をする人も社内にもいたので、この新商品ができた時は「ぜひ食べてほしい!」という気持ちが強かったですね。実際にその人たちが「とはいえ、そんなに変わってないでしょ?」と疑心暗鬼の中で「あれ、変わった!?」みたいなリアクションを見るだけで、すごく嬉しいですし、これはイケるという自信にもなりましたね。自分たちが今までやってきたことが認められたじゃないんですけども、分かってくれたというところが私の中ではすごく嬉しかったですね。なので、ぜひこれがお客様にも伝わってほしいと思っています。
伊藤:
ポジティブなコメントも多くいただいて、本当に嬉しい限りですよね。昔にはなかったような遊び心のあるようなコメントも色々あるんですよね。遊び心のあるコメントって、商品に不満がある時には出てこないじゃないですか。なので、そういう面でも一定満足できる商品を提供できたんだなと思って、それも嬉しかったですね。そういう余裕を持って食べていただけるというか、BASE YAKISOBAは気軽に食べてもらっているのかなと。
もっと作りたい。より生活に身近なところへ。
編集部:
そうですね、確かにユニークなコメントとかも多かったですね。そういう感情って食べ物の味の価値だけではなくて、その先にある食の楽しさだったり、元気になったりするという価値にも繋がってきますもんね。嬉しいです。今回新しくBASE YAKISOBAシリーズとして展開をして行くわけですが、その辺りの想いであるとか、実際に食べていただくユーザーの皆さんへのメッセージをそれぞれお聞かせいただけますか?
伊藤:
初期作の商品だと、ちょっと気合を入れて食べなきゃいけないとか、自分でアレンジしないと食べられないとか、「かんたん・おいしい・からだにいい」という部分でイメージと遠いと感じてられた人でも、今回のBASE YAKISOBAはより楽しめるようになってるかなと思っています。「毎日でも食べたくなる」というのは大事な要素だと考えていますし、そういう意味でより生活に身近なところに置いておける商品になったと思っています。
今回は、特に課題感の大きかった「麺」であり総合的なおいしさの部分にフォーカスをしていますが、それ以外にも沢山お声はいただいています。まずは一度今回のBASE YAKISOBAをご自身の生活の中でお試しいただきながら、今後もより皆様と一緒にブラッシュアップしていけると良いなと思っています。
稲垣様:
私たち製造の立場からでは、ベースフードさんが求めている品質の商品をしっかり作り、安心で安全な商品をお客様に届けていきたいです。品質のブレを無くすこと、一定に保つことが私たち製造の役目だと思っています。初めて食べた時においしいと思ったのに、次食べた時はなんか味が違う……みたいなことが絶対に起こらないようにしないといけないと思っています。例えば先ほどの生地の厚みに関しても、少しでもブレが発生しないようにどう我々として管理していくのかというところをしっかりとやっていきたいと考えていますし、やらなければいけないと。最後に、BASE YAKISOBAをたくさん作りたいので、お客様には毎日食べてほしいなって思っています!
編集部:
BASE YAKISOBAは新しい概念を持ったカップ麺でもあると思いますし、カップ麺好きの方はもちろんのこと、これまでカップ麺を食の選択肢として排除されていた方とかにもおすすめできる商品ですので、もっと多くの人たちに知っていただきたいなと思いますね。最後に少しお恥ずかしいかもしれないですが、パートナーとしてそれぞれに対してメッセージをお互いにお願いできますか?
伊藤:
過去の商品含め商品化までとてもお世話になってきていて、ここまで一緒にやっていただけるような関係性じゃないと、このレベルの商品を発売することはできなかったと思っています。今後も色々とご相談させていただいたり、ご意見をいただきながら、一緒に商品を作っていきたいと思っております。
稲垣様:
本当に伊藤さんとは近い距離感で接していただいてくれて感謝しています。通常のやり取りの場合、何か困ったことがあると一旦考えるんですよね。自分の中で考えてこれは言った方が良いのかな、これどうなのかなという風に。でも伊藤さんの場合は、凄く頼りになるので「すみません、分かりません」とか「これどうでしょう」とか気軽に相談したくなるんですよね。すぐにレスポンスをいただけるのも嬉しいですし、是非こんな関係をずっと築きながら、もっともっと良い商品を作れたらいいなと思いますね。
編集部:
素晴らしい関係性ですね。お二方ともありがとうございました。今後の商品も楽しみにしております。