【前編】 BASE YAKISOBA誕生の軌跡 〜“REBORN”に隠された私たちのHard Things〜|BASE FOOD x 寿がきや食品対談インタビュー
こんにちは。BASE FOOD note 編集部です。
2025年1月16日に発売を開始したカップ麺「BASE YAKISOBA」シリーズ。“REBORN”として展開することとなったこの商品誕生の背景には、いくつかの物語があります。本記事では、2024年に発売した初期作となる「BASE PASTA ソース焼きそば」発売から、僅か8ヶ月で終売となった背景、そして新商品「BASE YAKISOBA」の誕生まで、その軌跡を【前編】【後編】に分て振り返ります。当社開発担当であるR&D部 商品開発の伊藤と、初期作からパートナーとして支えていただき、「BASE YAKISOBA」の実現を叶えてくださった寿がきや食品株式会社 商品開発部 開発2課マネジャーの稲垣様にインタビューしました。
そもそも、麺にできない。
編集部:
まず、初期作である2024年に発売した「BASE PASTA」のカップ麺に関して、当時のことを思い出していただきながらお話を聞かせてください。ベースフードから寿がきやさんに初めてご相談をさせていただいたのはいつ頃ですか?また「完全栄養のカップ麺を作りたい」と相談を受けた時は率直にどう思われましたか?
稲垣様:
2年半か3年前ぐらいだと思います。正直なところ、その時は全くイメージがつかなかったです。きょとんとしましたね(笑)。ベースフードさんは完全栄養「パン」というイメージを持っていたので、「うちは麺ですが…麺ですか?」という感じです。私たちは即席麺や生麺など、あくまでも「麺」を作っていたので、何をどう作れば良いのかなって思いましたし、全くわからないことだらけでしたね。イメージが湧かないんです。
完全栄養食ってどんな食品なのかというところから勉強しましたし、それを具体的にどのように麺にしていけばいいのだろう…と、ベースフードさんと色々と意見交換をさせていただきながら進めていったという形です。
編集部:
なるほど、困惑から始まったんですね。「なんだかよく分からないし、うちじゃちょっと難しいですね」って突き返すこともできたかなと思うんですが、それでも検討しよう、作ってみようと相談を受けていただいたのは、何かきっかけというか、なぜそう思われたのですか?
稲垣様:
私たちは一般的なラーメンやうどんの製造を生業にしているわけですが、「健康志向」という軸の商品展開をあまりやったことがなかったんですよね。私たちにとっても新しいジャンルへのチャレンジとしてベースフードさんと一緒になってやれたら良いなと思い、開発を進めさせていただくことになりました。会社としても結構チャレンジングな領域ではありましたね。社内でもベースフードさんと言えばやはり「パン」というイメージを持つ社員が多かったので、皆イメージが湧かずに「ベースフードと寿がきやで何やるの?」というような反応が多かったと思います。
編集部:
商品化できるかも分からない中で、チャレンジすることを否定的に思う方もいらっしゃったのではないですか?
稲垣様:
はい、勿論いましたね。やはりこれまで私たちは「おいしいラーメン」を作ることだけを意識して製造してきた中で、「健康に良い食品はおいしくない」という潜在的なイメージを持っている人も少なからずいたので、健康軸の商品を本当に作れるのか?と思う人もいましたね。でも、その意識を変えるというか、チャレンジするだけの価値があるとは思っていました。
編集部:
有難うございます。稲垣さんにそう思っていただけたことで、今こうやってBASE FOODからカップ麺を発売することができたわけですし、本当に感謝しています。完全栄養って何だ?というところから学びながら始まり、検討と試作を積み重ねていったと思うのですが、実際にはどのように開発を進めていったのですか?
伊藤:
初めは私たちの方で考えたアイデアを持ち込んで「このような麺を作りたいんです」と相談させていただき、それを実際に工場ラインで製造するにはどうしたら良いですか?と相談した形ですね。
稲垣様:
そうですね。工場がどのように稼働しているかとか、どういう風に麺を作っているのかというのを実際に見ていただきたかったので、群馬県にある工場までお越しいただいて、現場を見ながら色々とアイデアや作戦を練っていきました。
編集部:
実際に作ってみようとなった時、何が一番大変な部分でしたか?
稲垣様:
私たちがメインで製造しているのは小麦粉の製品で、その作り方には慣れています。しかし、ベースフードさんの商品は食材そのものも違いますし、栄養素を含んだ配合の粉なので、実際に同じ工程で作ろうとすると全くできないんです……。麺を作るためには、粉と水を混ぜ合わせた生地を帯状に成形していくんですが、まず帯状の形に全くならないんですよ。私たちが通常扱っている麺だと生地同士の繋がりが良く、きれいな帯状として成形されるのですが、ベースフードさんの場合は生地に穴が開いてしまったりとか、ボロボロになって全く作れませんでした。1回目やってダメ、2回目やってみてダメ、3回目もダメ……もう時間がないから今日はもう終わりですね……と、もう永遠に繰り返しやるんじゃないかというぐらい上手くいきませんでしたね。私たちとしても、ある程度はここまで持っていけるだろうというイメージもあったんですが、一番最初の段階で完全にストップしてしまったわけです。味、食感、形状、麺とソースの相性などを考える以前の問題として、そもそも麺にできないという厳しい状況でしたね。
80パターンの試作品、全てが別次元の発見。
編集部:
なるほど、初期の段階からそういう困難があったんですね。それを受けて配合を色々と試行錯誤したんですか?
伊藤:
そうですね。ベースフードの基準は守りつつ、粉の配合を変えたバージョンをいくつか考えては試してもらっての繰り返しでした。今振り返ってもこの時が一番の試練でしたし、大変でしたね。生地ができないとどうしようもないですからね。
さらに、その当時はベースフード側でラボ品が作れなかったんです。通常ミキサー(混ぜる)工程があるんですけど、ベースフードにはその機械がなかったので、頭の中でレシピを考えて、それを寿がきやさんにお伝えして実際のラインで試すというようなやり方でした。開発開始から一年ぐらい経った時にミキサーを購入したんですが、その時も寿がきやさんに使い方とかを教えてもらっていましたね。
編集部:
なるほど、当時はそういう状況だったのですね。でも、頭の中だけで考えてるわけで、それを寿がきやさんにお出ししたとしてもそれが確率高く上手くいくとは限らないということですよね?全然ダメ……ということも多かったですかね?
稲垣様:
はい、そうですね。なので、改善策のアイデアを大体4つくらいいただくのですが、実際に工場に来ていただいて、その4つを試すというよりも、1つ目をやってみて、その結果を見ながら2つ目ではなく1つ目の改良をやってみて……というようにアレンジにアレンジを加えていきながら少しづつより精度を高めていくというやり方でした。頭の中で考えられていることと、実際に見て触れるのとではやはり全然違いますからね。
編集部:
お話を伺うに、一般的な製品とは全く異なる状況の中で、相当の葛藤と試行錯誤があったと想像しますが、商品として完成するまでどれくらいの回数を試作したのですか?
稲垣様:
工場ラインのテストだけで、約20回ぐらいはやったと思います。1回で4パターンくらい試験するので、試作だけで80パターンはやっていると思いますね。
編集部:
80パターンですか…素人視点でもかなり多い印象ですが、この数は一般的なんですかね?
稲垣様:
いえ、ものすごく多いですね、ものすごく(笑)。最初に生地にならないなんてことはまずないですし、テスト回数は本当に多かったです。
編集部:
純粋な感想になってしまうんですが、私がもし寿がきやさんだったとしたら、これだけやってもそもそも生地にもならない……となったら、もうできないんじゃないかってちょっと諦めも入ってきちゃうような気もするんですが、こうして続けていただいたというのは、何がモチベーションというか動機になっていたんですかね?私たちとしては物凄く有難いことですし、寿がきやさんに諦められた瞬間にこの商品は生まれてなかったと思うので。
稲垣様:
ベースフードさんとやり取りをさせていただいて凄く思ったことなんですけど、皆さん常に前向きなんですよね。まずネガティブがないんですよ。諦めればいいっていう発想がなくて、どうしたらやれるのか?っていうところから話が始まるので、私もその発想力というか熱意に引っ張られたというか、私自身もやり続けたいと思ったんです。なので、失敗があったとしても、やっぱできないね……で終わるのではなく、次どうしたらいけるかね?次はこれやってみましょうよ!というような形で、私たちもじゃあこうやってみよう!という感じでした。
編集部:
たしかに無邪気というか、ベースフードにはそういうカルチャーがあるかもしれないですね。その分、稲垣様にもご迷惑をおかけしてるのかもしれないですね。有難うございます。改善を進めていく中で、例えば麺にならないとかの課題も含めてですが、寿がきやさんの方から私たちにもっとこうしたら良くなるかもよとか色々アドバイスをいただきながら、共に意見を出し合いながら決めていくという進め方でしたか?
稲垣様:
そうですね。ベースフードさんの生地は特殊で、少し硬めなんです。通常当社で扱っている商品の場合だときれいにミキサーが回るんですが、ベースフードさんの場合は生地が硬くミキサーへの負荷が過剰に掛かり、ミキサーが振動してしまい上手く回らないんです。なので、入れる量を少しダウンサイズにして回してみるとどうですかね?って現場に立ち会ってもらいながら意見交換を重ねたりしました。
伊藤:
私たちとしても知見がないので、全てが発見なんです。BASE PASTAとして生麺タイプは作ってきましたが、生麺とカップ麺とでは別物というくらい違いますからね。生麺を作った後の工程から初めてカップ麺の工程がスタートするというイメージで、もう別次元の発見であり課題が沢山ありました。
“作れた”ということに満足感。
編集部:
色々と越えなければいけないハードルが多々あったと思いますが、実際に初期作となる「BASE PASTA ソース焼きそば」が完成した時はどのような感想でしたか?もう安堵に近かったですか?
稲垣様:
そうですね、まず作れたっていうことに満足感がありましたね。あまりにも最初の工程から上手くできなかったので、“麺”を作れた時に「作れた!」っていう充実感はありましたね。
伊藤:
それまではそもそも「商品にできるのか?できないのか?」というレベルのところにいたのが、「商品化はできるんだ」というレベルになれたという心境が大きかったです。商品化ができるから次のステップに進めるぞ、やっと売れるぞって。
編集部:
そして4月に「BASE PASTA ソース焼きそば」を発売し、その4ヶ月後の8月にすぐ「BASE PASTA 旨辛まぜそば」を発売することになったわけですが、味種も麺も異なる中で、2つ目の商品では何か違う課題感はありましたか?
伊藤:
ソース焼きそばを開発した時に感じた課題感をどう解消できるか?にフォーカスして考えていましたね。ソース焼きそばで言えば、例えば全粒粉の風味を感じやすい商品だったんですが、それを旨辛まぜそばではどのようにその風味をマスキングして食べやすくするかという課題に対して、スパイシーさを強めにしてみると良いかもしれないといった感じで、フレーバーと麺との相性を考えながらよりおいしい商品を作ることを第一に考えて進めてましたね。ただ一方で、ソース焼きそばの時と同じ感じでできると思っていたのですが、ソース焼きそばで使用していたものとは別の麺にしたことで、同じ感じではいけなかった……という新たな発見もありました。
編集部:
そんな紆余曲折を経て、BASE FOODでは初めてのカップ麺となる「BASE PASTA ソース焼きそば/旨辛まぜそば」を2024年に発売したわけですが、この商品に関しては文字通り“賛否両論”ありましたね。ポジティブなお声も多数いただいた反面、SNS等でもネガティブなご意見を多数いただきました。もちろん、様々なご意見をいただくということは私たちにとっての資産でもあり、次に繋がる貴重な声なのですが、当時を思い出していただいて、率直にどう感じられましたか?
稲垣様:
そうですね、当社の方では、その賛否の否の方に関しては……
ーーー続きは【後編】へ。公開をお楽しみに。