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必要なのは集中力と持続力。|「AiRK」森山未來さん、アーティスト山田悠さん

こんにちは。BASE FOOD note編集部です。
ベースフードではアート・芸能・ファッションシーンで活躍するクリエイターやデザイナー、アーティストの“ベースアップ”をサポートする「BASE UP CULTURE PROJECT」を展開中。
今回は同プロジェクトにてサプライヤーサポートをしている「Artist in Residence KOBE(以下、AiRK:アーク)」の発案者であり運営にも携わられている俳優・ダンサーの森山未來さんと、AiRKを拠点に活動されているアーティスト山田悠さんにインタビュー。アーティスト活動のパフォーマンスを向上させるために意識していることや秘訣について、「運動・食・睡眠」の3つの視点からお話を伺いました。

人と出会い、新しい環境からインスパイアされる空間。

森山未來(もりやまみらい)|5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。2013年には文化庁文化交流使として、イスラエルに1年間滞在、Inbal Pinto&Avshalom PollakDance Companyを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。 「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。俳優として、これまでに日本の映画賞を多数受賞。ダンサーとして、第10回日本ダンスフォーラム賞受賞。東京2020オリンピック開会式ではオープニングソロパフォーマンスを担当。2022年4月より神戸市にArtist in Residence KOBE(AiRK)を設立し、運営に携わる。ポスト舞踏派。アート専門番組「MEET YOUR ART」 MC。https://www.miraimoriyama.com/

編集部:
はじめに、森山未来さんに「AiRK」がどのような施設か教えていただけますか?

森山さん:

日本も含めた世界中に「Artist in Residence(アーティスト・イン・レジデンス、以下、AIR)」という、アーティストが一定期間居住しながら制作できる施設があります。いつも拠点としている場所とは違った場所で生活しながら、そこで出会う人たちや新しい環境からインスパイアされて作品を作ることができるんですよね。僕自身、パフォーミングアーツ作品の制作プロセスとして、AIRを取り入れています。こうした施設が神戸にもあればいいなと思っていたのですが、2022年にその思いが叶い、AiRKを立ち上げるに至りました。ここにはリビング、キッチン、寝室など生活に必要なものが揃っていて、アーティストが自分のペースで暮らしながら制作に取り組むことができます。

AiRK運営メンバーの6人。左から遠藤豊さん、森山未來さん、松下麻理さん、大泉愛子さん、小泉亜由美さん、小泉寛明さん。Photo by Junpei Iwamoto

森山さん:
僕は2020年から「アートと出会う」をコンセプトとしたYouTubeの現代アート専門番組「MEET YOUR ART」でMCを担当させてもらっていますが、こちらでも様々なアーティストとお話しする機会がありました。アーティストと話すことはとても刺激的で、自分自身の表現活動にも繋がっていきます。AiRKを通して、神戸で生活する人々や神戸で活動するアーティストたちと、国内外のアーティストとの出会いを創出する場作りができれば良いですよね。
僕自身も公私問わず国内外を旅して、その中で様々な人や街との出会いから作品が生まれ、そしてまた旅を続ける。そんな生き方をしています。出身地だからということではなく、神戸という街は僕にとって相性が良い場所であり、北野にアーティスト・イン・レジデンスができるということはアーティストにとって、そして僕にとっても意味のあることだと思っています。
アートには、想いのある人と人とをつないでいく力や魅力があるんだと、AiRKの活動を通じて改めて感じています。

AiRKの拠点は異人館で知られる神戸・北野地区。かつて神戸市内に存在した各国領事館や大使館で働く人たちも居住していた「外国人マンション」と呼ばれる建築物のひとつをリノベーションし、築60年の3階建てヴィンテージマンションの2〜3階部分を活用する。Photo by Manami Inui
Photo by Junpei Iwamoto

良い体調で、良い刺激を受け、制作に集中できる。

山田悠(やまだはるか)|東京を拠点に活動。2014年ディジョン国立高等美術学校DNSEP(修士相当)アート課程修了。武蔵野美術大学油絵学科卒業後、フランスのディジョン国立高等美術学校に留学し、空間デザインとアートの課程を修了。2つの領域での学びを通じて都市空間におけるアートの実践に興味を持つ。https://www.instagram.com/haarukka.yamada/

編集部:
山田さんはAiRKを拠点として制作をされていますが、どのような生活を送っているのですか?

山田さん:
ここに滞在する間は、制作中心の生活を送っていました。この施設では「起きる」「食べる」「寝る」タイミングは自由です。私は普段は夜型の生活になりがちなのですが、こちらの施設に滞在している間は住み込みでAiRKを運営している松下さんのおかげで早寝早起きができますね。体調を良い状態に保ちながら、制作に集中できるのが本当にありがたいですね。

編集部:
生活のリズムを整えることができるのですね。その他に、AiRKで制作することのメリットはありますか?

山田さん:
こちらの施設に関わる人たちのアートに対する熱量に良い影響を受けます。「アートに囲まれているだけで幸せ」というような思いを伝えてくれて、そうした人たちのいる中で作品を作ることができるということが素晴らしい体験ですね。
また、世界中から来た多種多様なアーティストと交流できるということも魅力です。自分とは全く相容れない世界観だと思っていた人とも、話してみると意外と共通点があって驚くことがあります。それが良い刺激となって新しいアイデアが生まれてくることもあるんです。滞在中の人たちが意気投合し、一緒に展覧会を開催することもあり、世界が広がっていくのを感じます。

食はコミュニケーション。

編集部:
AiRKに滞在されている間、食事などはどのようにされていますか?

山田さん:
時間に余裕のある時には、近くのファームスタンドで有機栽培の野菜などを買ってきて料理をすることもあります。でも制作に没頭してしまって心身ともに余裕がないときには、すぐに食べられるようなものを買ってきたり、配達してもらったりということもありますね。AiRKの方が食事を作ってくれることもありまして、疲れて帰ったときにご飯を作っておいてくれるのは本当にありがたいです。おでんは心と体にしみますね。

森山さん:
AiRKのスタッフが作る料理に助けられた
っていうアーティストは多くて、この食事の温かさを求めてまたここを訪れるという人も少なからずいるように思います。こういう時間や空間を提供できるのもAIRの魅力ですね。
誰かと食を共にすることの意味っていうのは非常に大きいと思うんですよね。人間だけが食べ物をシェアする能力を持っているという話も聞いたことがあります。誰かと一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりすることは、その時に仕事をしている人とコミュニケーションを図るための貴重な時間。なのでこうやって共有キッチンや共有リビングがある中で、皆んなと一緒に食事するなどして仕事とプライベートの間にあるグラデーションを共有していくことは、作品を深めていくための重要な要素だと考えています。

ルーティンに拘りすぎない。

編集部:
アート活動をする中で、体調管理で気をつけていることはありますか?

森山さん:
僕は仕事の性質上、あるいは単に性格もあると思いますが、その都度向き合う対象が変わるので、そのためにどうするのがベストかということを柔軟に考えているつもりです。食事に関しては、発酵食品はシンプルに好きです。幸いなことに睡眠にストレスを感じることも少ないのですが、基本的にはあまりルーティンに拘りすぎないように意識しています。ルーティーンを設定してそれが崩れてしまうと、メンタルも一緒に崩れてしまいますよね。太らなければならない時もあれば、痩せなければならない時もある。身体的に動く時も動けない時も、自分のチョイスに対してポジティブであれるよう「その状況を一番良い状態とする」という気楽な気持ちでいるようにしています。
あとは、体調管理というかメンタルの部分での食への価値観でいえば、先ほどお話しした食はコミュニケーションという話に繋がるんですけど、やはり隣で食べてる人や作ってる人との距離が重要ですかね。同じ食材で同じ料理が出てきたとしても、その雰囲気で美味くも不味くもなるので、やっぱり食の環境って大事だと思います。

体調の良し悪しは作品づくりに直結する。

編集部:
山田さんはいかがですか?

山田さん:
恥ずかしいのですが、食に関してでいうと私は好き嫌いがとても多いので、日頃からなるべく体に良さそうなものを意識して食べるように気をつけています。野菜をたくさん使ったお好み焼きはAiRKに来た時の定番で、私はそれを「完全食」だと思って食べています。野菜を多くとって、栄養をバランスよく摂るようにして、とにかく制作を続けるために体調を崩さないよう、風邪をひかないよう気をつけています。
アート活動は体力勝負ですからね。神戸で滞在制作した作品は「街の壁」をモチーフにしているので、リサーチのために1日6時間歩き回る日もあります。ですから体力づくりであり、体調を維持するということが作品づくりに直結します。せっかくここに滞在しているのに寝込んでしまっては意味がないですし、体調管理には普段より気を付けていますね。

AiRK滞在期間中に出会い、2人展を一緒に開催したアーティストのサム・ワイルドが、来日してすぐにスポーツジムに入会して通っていたのが印象に残っています。サムはパソコンを使って制作をしているのですが、1日中部屋こもってパソコンをしているので、肩が痛くなってしまうのだそうです。その対策としてまずスポーツジムに行くということを制作のルーティンに取り入れていて、感心しましたね。そうした制作のための体づくりは、自分にも必要なことだと感じました。
アート作品をつくり出すのに必要なのは、爆発力のようなものだとイメージされがちですが、実はその後の「集中力と持続力」が大切です。そのためにはまず「体が健康であるということが基本」だな、と感じるようになりました。健康で長生きすれば、それだけ作品をたくさん作れますしね。

編集部:
ありがとうございました。

神戸にお伺いした際には、森山未來さんがキュレーションを務め山田悠さんが参加していたAiRKの年に一度の企画展『AiRK Research Project Vol.2 山田悠+サム・ワイルド 2人展「Walls and Frogs −境界線に見るあわい−」』が開催されていました。これからのAiRK、そしてAiRKという場での出会いから生まれる作品が楽しみですね。

展示の様子:作品は、山田さんが北野の街を巡る中で出会った様々な壁を鉛筆でトレースし、コラージュした作品。

最後まで読んでいただき誠に有難うございます!今後ともベースフードをよろしくお願い致します。